麻溝台の「女子美アートミュージアム」で芸術に触れる

相模大野駅北口のバス停には、「女子美術大学行」があります。

私には女子美術大学に進学した友だちがいますが、当時は都内の実家に住んでいたため、女子美のキャンパスがどこにあるのか気にしたことがありませんでした。

友だちが通っていたキャンパスの近くに住むなんて、時間の流れとは不思議なものです。

先日、バスに揺られて女子美術大学前まで行った際に「女子美アートミュージアム」の看板が車窓から見えたのを、美術館好きなわたしは見逃しませんでした。

いつかゆっくり時間を取って行ってみたい。
できればミュージアムの方にお話しも聞いてみたい。

そんな私のわがままを女子美アートミュージアムへのメールにしたためたところ、取材対応をしてくださるという、ありがたいお返事をいただきました。

今回は相模原の地域に根差した文化施設、女子美アートミュージアムで芸術に触れてみます。

自然豊かな環境は芸術鑑賞にぴったり

女子美アートミュージアムは相模原麻溝公園の隣にあります。
ミュージアムの入口前には見事な銀杏並木が…!!

少し雲が出ていた日だったのですが、薄い雲に黄色い銀杏がよく映えます。
落ちている葉を踏みしめながら美術館までの道を歩くと、なんだか私まで芸術家になった気分。

途中で女子美術大学に併設されているコンビニに寄りましたが、真っ赤なつなぎを着ている女の子を目撃。私は文学部の出身ですが美術も好きで、デッサンを習っていたこともあります。
つなぎの女の子は、これからどんな作品を作るのでしょう。

女子美術大学前のバス停から女子美アートミュージアムに着くまでの道中でもいろいろと想像がふくらみ、期待が高まります。

どこか懐かしさも感じる近代的な建物

コンクリートが主体になっている建物は近代的な印象ですが、庭にある木々や落ち葉、開かれている門がどこか懐かしさを感じさせます。女子美アートミュージアムへの入場は無料です。

ふらりと散歩に来てそのまま入れる美術館は、今の時代貴重なのではないでしょうか。
入口には12月10日まで開催されていた「きもの」展のポスターが貼ってあります。

今日はメールでの問い合わせに対応してくださった、守屋真奈美さんにお話しをうかがいました。

相模原の地域に根差した重要な役割を担うミュージアム

女子美アートミュージアムのグループ長を務めていらっしゃる守屋さん。少し恥ずかしそうにしながらも、写真撮影に応じていただけました。

守屋さんは、こちらに勤めて30年以上!女子美アートミュージアムと共に、相模原の美術教育に貢献されてきました。

相模原の子どもたちの美術展示を行う『さがみ風っこ展』の会場も、女子美アートミュージアムです。「女子美アートミュージアムが、子どもたちが美術に興味を持つきっかけになれば」とおっしゃっていました。

また、今回開催されていた、きもの展についてもお伺いします。

「お着物は江戸時代のものから収集しています。女子美アートミュージアムに収蔵されている着物は、『旧カネボウコレクション』と呼ばれるコレクションで総数1万2000点。日本の着物だけでなく、エジプトのコプト裂(きれ)やインドネシアの織物なども収蔵しています。デリケートな着物や織物の収蔵には気を遣いますが、毎年形を変えて展示するのを、地域の方にも楽しみにしていただいているんですよ」

と、終始笑顔で、穏やかに話してくれた守屋さん。守屋さんの説明は分かりやすく、引き込まれました。生徒になったような気持ちで、メモを取りました。

長年ミュージアムに勤務されて、美術に携わってきた喜びと誇りがうかがえる貴重なお話を聞かせていただきました。

展示に感激するおばあさまに感じた「時代」

展示物は撮影禁止だったため、玄関にあったポスターの写真を撮りましたが「きもの」展は素晴らしい内容でした。

今回の「きもの」展は、着物が「着られる衣服だった」点に着目し、実際に来ている姿をイメージできるように作られたそうです。

江戸や明治の着物が実際に着ているかのように人型に羽織った形で展示されていたり、大きく広げられていて展示されています。当時の化粧品やかんざし、帯どめも、観やすい形で並べられ、ケースの中で光っていました。

特に印象的だったのが来館されていたおばあさまの言葉。私の祖母は大正の生まれですが、おばあさまも同じ年代なのでしょう。

戦争で自身の着物が焼けてしまったことを付き添いの方に話しながら歩いていると、一点の着物の前で立ち止まり、「まあ立派な縮緬(ちりめん)…!」と感嘆の声を上げられました。

ひとしきり付き添いの方に、目の前の縮緬の素晴らしさを話したあと「この着物が見られて本当によかったわ」とつぶやいていて、なんだか胸がいっぱいになりました。

私自身は着物を着たことがありません。しかし、母方の祖母があつらえてくれた浴衣は本当によく着ました。

私が小学校五年生のときに「もうあなたはこれ以上すごく身長が伸びることはないだろうから、長く使えるものを作ろうね」と言って、紺地に赤い花が描かれた生地の浴衣を作ってくれたのです。

夏祭りのたびに着た浴衣は、まだきれいなまま手元にあります。亡くなった祖母を思い出すステキな時間でした。

相模原の芸術に触れるゆったりとした時間

出入り口には、女子美術大学や女子美アートミュージアムの歴史とともに、地域のジオラマが展示されています。

相模原に住む人々が、芸術に触れる機会を作ってきた女子美アートミュージアムは、どこか日常生活とは違った時間が流れているようでした。

これからは展示の案内をチェックしてたびたび足を運ぼう。そんなことを考えながら、また1つお気に入りスポットが増えて嬉しくなりました。

あなたも女子美アートミュージアムで豊かな時間を過ごしませんか。

女子美アートミュージアム
住所:神奈川県相模原市南区麻溝台1900
電話:042-778-6801
アクセス:小田急小田原線「相模大野」駅北口から女子美術大学行きバス「女子美術大学前」徒歩3分
開館時間:10:00-17:00(入場16:30)
定休日:展覧会開催中の火曜日(祝日の場合は翌日)

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。